アウティングとは?LGBTQ+当事者を悩ます問題を分かりやすく解説
みなさんは「アウティング」という言葉を聞いたことがありますか?
きっと、LGBT関連の書籍や記事を読んだことがある人なら馴染みのある言葉かもしれません。
アウティングはLGBT当事者を悩ませる行為であり、絶対に行ってはいけないものです。
でも、実際に「アウティング」と「カミングアウト」の意味が混合してしまったり、そもそもどんな意味なのか知識が曖昧かもしれません。
そこで、今回は【LGBTを悩ます”アウティング”の意味】を分かりやすく解説します!
アウティングを知ることは、当事者の命や生活を守るためにも非常に大切なこと。
あなたの周りの大切な人を守るためにも、アウティングをしっかり理解しておきましょうね。
アウティングとは?その意味と危険性を徹底解説
アウティングとは、LGBTなどのセクシュアルマイノリティであることを、本人の承諾を得ずに、第三者が勝手に他人に伝えてしまう行為を言います。
セクシュアリティとは、すごく繊細な個人のプライベートな情報です。
そもそも、セクシュアリティーを勝手に他者に伝えること自体、あまり良くないことですよね。
しかし、なかには「アウティング」を「カミングアウト」と似た意味に捉えられることもよくあります。
ですが、カミングアウトは当事者本人が自身の性自認や性的指向を他者に伝えることです。
「Come out of the closet」(クローゼットから出す)という英語が元になっている言葉で、あくまでも当事者自身が自分の意思で第三者に告げるか否かを選択することがポイント。
カミングアウトは自発的に他者にセクシュアリティを伝える行為である一方で、アウティングはあくまでも他者が勝手に当事者のセクシュアリティを他者に暴露するものとなります。
さらに、アウティングには、人の人生を変えてしまうような危険な側面があるのを知っていますか?
特に、本人が公にしていないセクシャリティを暴露するアウティングは、精神的苦痛を与え、その人の居場所を奪うことや、プライバシーの侵害につながりかねません。
また、時にはLGBT当事者の精神が追い詰められて自死に追い込んでしまうような、悲しい事件も後をたちません。
実際にどのようなことに繋がってしまうのか、実際に起きた事件などを見ていきましょう。
一橋大学アウティング事件
2015年に起きた「一橋大学アウティング事件」は、アウティングという言葉を世間に広めたきっかけと言われています。
事件の概要
2015年、当時一橋大学に在学していた男子学生Aさんは、同性である友人の同級生の男子学生Bさんを好きになってしまいます。
そして、AさんはBさんに告白をしました。
しかし、告白を受けたBさんは、Aさんと共通の友人を含む7人のLINEグループに「Aさんはゲイである」と暴露してしまいました。
好きだったBさんにアウティングをされてしまい、精神的なショックを受けたAさんは、パニック発作を起こすようになります。
そして、最終的に校舎から身を投げ自殺してしまったという悲しい事件です。
Aさんは大学のハラスメント相談室に相談したものの、性同一障害のパンフレットを渡されるなど、適切なサポ―トを受けることができなかったようです。
アウティングをめぐる事件の判決結果
事件から翌年の2016年に、死亡したAさんの遺族は、Bさんと大学の責任を追及して損害賠償を求める民事訴訟を起こしました。
遺族とBさんは2018年に和解したと報道されていますが、大学側は転落死を予見できなかったとして、東京地裁は2019年2月に遺族側の訴えを棄却。
しかし2020年10月、大学側が公表していない新事実が明らかになり、Aさん遺族は控訴審の判決期日を取り消し、弁論の再開を東京高裁に申し立てます。
そして、11月25日に裁判長は「アウティングが人格権やプライバシー権を著しく侵害する許されない行為であるのは明らか」と言及しました。
しかし、一橋大学の安全配慮義務違反は問えないという理由で、遺族側の控訴を棄却され、損害賠償請求は認められずに裁判は幕を閉じました。
このように、一橋大学で起きた事件は「アウティングが不法行為である」ということを、社会が認めざる得ない問題だと認識されるきっかけになりました。
今後アウティングによって傷つく人が増えないよう、アウティングは絶対にやってはいけない行為だと言うことを忘れないで下さい。
アウティングは違法? 訴えられる可能性もある
アウティングはプライバシーの侵害に当たるほか、周囲や世間の差別的な言動を誘発することにも繋がりかねません。
さらに、このアウティング行為は被害者に深刻な精神的ダメージを与え得るため、不適切な行為といえます。
そのため、アウティングをした人は被害者に対して損害賠償責任を負うほか、名誉毀損罪や侮辱罪で処罰される可能性があります。
もし、社内の従業員が社内でアウティングをした場合、会社が何らの調査や処分などを行わずに放置していると、「男女雇用機会均等法違反」による勧告や公表処分の対象となる可能性もあるんですね。
会社にとってもアウティングは、企業のブランドや社会的評価が低下する原因にもなるので注意が必要です。
これから紹介する事例は、性的指向の暴露で初の労災認定がされたケースです。
アウティングでの労災認定がされた事例
経緯は、20代のゲイの男性が都内の保険代理店に2019年に入社した際、緊急連絡先を登録するために同居する同性パートナーの存在を会社側に伝えたとされます。
しかし、その後上司がパート従業員の1人に対して男性の同意がないまま同性愛者であることを暴露してしまいます。
男性は上司を信頼できなくなり、対人恐怖症となって業務に支障をきたすほどになってしまいました。
そして、さらに症状が悪化してしまい男性は精神疾患を発症、2年後に退社してしまいました。
男性は2021年に労基署に労災申請し、2022年3月に労災認定されました。
このように、時代はどんどん変化しています。
これからも、欧米のようにアウティングは訴訟問題に発展する流れになってくるでしょう。
アウティングを防ぐために、私たちができることを今一度考えてみましょう。
「アウティング」をなくすためにできることは?
「アウティングをしてはいけない」ということは、みなさんもよく分かったかと思います。
ここからはより具体的に、アウティングを防止するためにできることを考えていきましょう。
・LGBTの理解を深める
・当事者の希望を聞いておく
・基本的に他者のセクシュアリティーを許可なく話さない
LGBTの理解を深める
まずは、LGBTの理解を深めることが一番大切です!
LGBTに対する理解が深まれば、当事者の悩みなどに寄り添うことができるはず。
同じ当事者でも「絶対に他人にセクシュアリティを知られたくない!」と考える人や、「周りにオープンに生きたい」と思っている人など、さまざまです。
なので、まずはLGBT当事者の気持ちに寄り添えるように、LGBTに関する正しい知識を身に付けることが大切ですよ。
当事者の希望を聞いておく
先程も少し触れたとおり、同じ当事者でも
「周りにオープンに生きたい」
「自分の親しい人にだけ知っておいてもらいたい」
「絶対に他人にセクシュアリティを知られたくない!」
というように、考え方がさまざまだったりします。
勝手に他者に暴露することはもちろんしてはいけませんが、あわせて本人の希望を聞いておくのもいいかもしれませんね。
本人の希望を聞いておくことで、当事者がどの範囲まで自分のセクシュアリティを知って欲しいのかを知ることができますよ。
基本的に他者のセクシュアリティーを許可なく話さない
本人の許可を取ることも大事ですが、やはり大前提は「基本的に他者のセクシュアリティーを許可なく話さない」ことです。
セクシュアリティは非常に繊細なトピックです。
間違ってもからかったり、冗談を言うような内容ではないことを覚えておきましょう。
仲の良い友人だからと言って、「あいつってゲイらしいぜ!」と、冗談でも当事者のセクシュアリティを話さないよう気をつけましょう。
よくある「善意のアウティング」
みなさんは「アウティング」と聞くと、故意にセクシュアリティを言いふらすようなイメージを持つかもしれません。
ですが、実際には善意のアウティングというのもかなり多いです。
善意のアウティングとは、
「〇〇ちゃん(当事者)がもっと生きやすくなるように周りにも知っておいて貰おう」
「自分では両親に伝えづらいと思うから、代わりに私から伝えておこう」
「きっと親友のXXちゃんも知ってるよね!確認してみよう」
というような形です。
アウティングは、決して故意に言いふらすだけでなく、このように「良かれと思って」というような善意から起きてしまう場合も、実は結構多いんですよね。
さらに、「みんな親しい人は知っているだろう」という思い込みも危険です。
仲が良さそうに見えても、実際にはセクシュアリティまでは伝えていなかったり、慎重に人を選んで伝えている場合もあります。
何気なく知っていると思ってぽろっと言ってしまう場合も、アウティング行為と変わりません。
絶対に他者にセクシュアリティを伝える時には、当事者本人からの許可を取るようにしましょう!
まとめ
日本で約10人に1人存在すると言われるLGBT当事者たち。
今あなたの周りにいなくても、見えないだけで必ず存在しています。
もしかすると、今あなたの隣に座っている親しい家族や友人も当事者の1人かもしれません。
大切な人を守るためにも、「アウティング」という行為は絶対に行わないように気を付ける必要があります。
あなたは他人から人生を壊される権利はありません。
反対に、あなたには他の人の人生や命を奪う権利だってないはずです。
LGBTの正しい知識を身につけて、いつでも当事者に寄り添えるようにできたらいいですね。
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